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接着防止バリア市場シェアと医療用途別トレンド

癒着防止材市場:世界的な成長の動向と将来展望

はじめに

癒着防止材市場は、世界的な外科手術件数の増加や慢性疾患の蔓延を背景に、着実な拡大を続けている。世界市場規模は2025年に約11億米ドルと評価されており、2026年の11億6000万米ドルから2034年には18億1000万米ドルへと成長する見通しで、予測期間中の年平均成長率(CAGR)は5.7%と予測されている。医療技術の革新や術後合併症への意識向上が相まって、この市場は今後も安定的な発展が期待されている。

癒着防止材とは何か

癒着防止材とは、外科手術後に組織同士が異常に癒着するのを防ぐために、手術中に組織表面の間に適用される一時的な生体適合性素材のことである。ゲル、フィルム、ファブリック(布状素材)など様々な形態が存在し、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、その他の高分子化合物など、体内で自然に分解される生体吸収性素材から構成されている。これらの製品は術後の癒着形成を予防することで、患者のQOL(生活の質)向上に大きく貢献している。

従来の製品と比較して、近年の最新製品は体内での自然分解が可能なよう設計されており、取り出し手術が不要なため合併症リスクを最小限に抑えられる点が大きな特徴である。ヒアルロン酸系バリア、ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、酸化再生セルロースフィルムといった合成製品は、生体適合性・術中操作性・癒着防止効果を向上させており、市場の普及促進に貢献している。

市場の主な成長ドライバー

外科手術件数の増加

外科手術の増加は、市場成長を後押しする最大の要因のひとつである。世界では年間約3億1000万件もの大規模外科手術が実施されているとされ、そのなかには心臓血管外科、婦人科、整形外科、一般外科など多岐にわたる手術が含まれている。心血管疾患や神経疾患といった慢性疾患の有病率が上昇するなか、外科的治療の需要は今後も増大すると見込まれている。

技術革新の加速

大手企業を中心に、先進的な生体吸収性ポリマーや生体素材、ゲル・フィルム・スプレーなど新たな投与形態の開発・導入が活発化している。2025年3月には、Fziomed社が国際手外科・手のリハビリ三年大会(IFSSH/IFSHT)において「Dynavisc癒着防止バリアゲル」を発表し、技術革新の最前線に立っていることを示した。また、2025年4月にはWomed社が子宮内腔癒着防止フィルム「Womed Leaf」を市場投入するなど、新製品開発の動きは止まらない。

市場の課題と制約

高コスト問題

癒着防止材の普及を妨げる主な要因として、製品コストの高さが挙げられる。例えば、Baxter Genzyme社の「Seprafilm癒着防止バリア」は約2,999米ドルで販売されており、病院の予算や医師の使用意向、保険適用の範囲に強く依存している。ヒアルロン酸やPEGなど高度な素材は複雑な製造プロセスを要するため、コスト高の主因となっている。

発展途上国における医療アクセスの限界

医療インフラが整備されていない発展途上国では、癒着防止材に関する認知度の低さや、先進的デバイスの不足、医療費支出の制限、不十分な保険適用制度などにより、製品の普及が遅れている。世界全体で見ると、約45億人が必要不可欠な医療サービスへの完全なアクセスを欠いているとされており、市場拡大の大きな障壁となっている。

セグメント別分析

製品タイプ別

製品タイプ別では、合成系と天然系に大別される。合成系はヒアルロン酸、再生セルロース、その他に細分化され、2025年には最大の収益シェアを占めた。世界では年間100万件以上の心臓外科手術が実施されており、これが合成製品の需要を押し上げている。天然系セグメントは予測期間中に年率5.0%で成長する見通しである。

製剤形態別

製剤形態はフィルム/メッシュ、ゲル、液状に分けられる。フィルム/メッシュセグメントが2025年の市場の約51.0%を占め首位に立っており、院内感染の増加に伴う需要拡大がその主因となっている。ゲルセグメントは予測期間中に年率6.2%の成長が見込まれている。

吸収性別

吸収性の観点からは、吸収性と非吸収性に二分される。吸収性セグメントが2025年に約90.3%のシェアを占め市場を牽引した。2022年2月には、日本の郡是株式会社(Gunze Limited)が国産の吸収性癒着防止バリア「TENALEAF」の製造販売承認を取得したことも注目される。

適用手術別

適用手術別では、一般外科、婦人科手術、心臓血管外科手術、整形外科手術、その他に区分される。一般外科セグメントが2025年に35.4%のシェアで首位を維持した。婦人科手術セグメントは予測期間中に最も高い成長率(年率6.2%)を記録すると見込まれている。

エンドユーザー別

エンドユーザーは病院・外来手術センター(ASC)、専門クリニック、その他に分類される。病院・ASCセグメントが市場を主導しており、2026年には80.5%超のシェアを維持する見通しである。米国だけでも現在約10,000の外来手術センターが稼働しているとされ、低コスト・短期滞在型の外来手術への選好が高まっている。

地域別分析

北米

北米は2025年に約4億1000万米ドルの市場規模を誇り、37.27%の市場シェアで世界首位を維持している。充実した外科インフラ、充分な保険適用制度、活発なR&D活動が成長を支えている。

ヨーロッパ

欧州は年率5.0%の成長が予測されており、2026年には3億2000万米ドル規模に到達する見通しである。英国、ドイツ、フランスが主要市場を形成している。

アジア太平洋

アジア太平洋市場は2026年に3億米ドル規模に達すると予測されており、第三位の成長地域として注目されている。日本市場は2026年に約7000万米ドルと推計され、世界全体の約5.8%を占める見通しである。日本では外科手術件数が歴史的に多く、R&D活動も活発化している。中国は約1億米ドルと最大規模の一角を占め、インドも約5000万米ドルに達すると見込まれている。

競合環境

市場を牽引する主要企業として、MedtronicおよびJohnson & Johnson Services社が挙げられる。2026年3月、MedtronicはGEヘルスケアとパートナーシップを締結し、病院環境でのスマートで効率的なケアの提供を目指している。また、Baxter社、Womed社、郡是株式会社(Gunze Limited)、Fziomed社、清川商店(SEIKAGAKU CORPORATION)、テルモ株式会社(Terumo Corporation)なども重要なプレーヤーとして市場での存在感を高めている。

最新の製品・業界動向としては、2025年9月にWomed社が「Womed Leaf 吸収性癒着防止バリア」のPMA承認を取得したこと、2025年7月にはFziomed社がOxipelゲルの「De Novo分類」を取得し腰椎手術後の疼痛軽減への適用が認められたことなどが特筆される。

まとめ

癒着防止材市場は、慢性疾患の増加に伴う手術件数の拡大、生体材料技術の進歩、外来手術センターの普及を背景に、2034年まで着実な成長軌道を描くと予測されている。一方で、高コストや新興国における医療アクセスの課題が市場拡大の障壁となっており、各社はコスト低減・技術革新・市場開拓への取り組みを強化することが求められる。日本においても国産製品の開発が進むなど、アジア太平洋地域全体での市場成熟が今後の注目点である。

出典:https://www.fortunebusinessinsights.com/adhesion-barrier-market-115829

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