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インド乳製品市場の市場規模と成長トレンド分析

インド乳製品市場:急成長する巨大産業の現状と展望

はじめに

インドは世界最大の牛乳生産国であり、そのインド乳製品市場は、今や世界が注目する巨大産業へと発展している。2024年における市場規模は1,353億米ドルに達し、2025年には1,468億米ドルへと拡大することが見込まれている。さらに2032年までには2,740億9,000万米ドルへと成長し、予測期間中の年平均成長率(CAGR)は9.33%に達すると予測されている。この驚異的な成長は、インドの食文化、政府の支援政策、そして健康志向の高まりという複合的な要因によって支えられている。

市場の背景と規模

インドの乳製品産業は、国内経済に対して約5%を貢献しており、8,000万人を超える農家を直接支える重要な基幹産業である。インドは世界の牛乳生産量の約23%を担う最大の生産国であり、その生産の約半分は水牛、もう半分は在来種および交雑種の牛から得られている。主要な生産州としては、ウッタル・プラデーシュ州、マハーラーシュトラ州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、マディヤ・プラデーシュ州、ラジャスターン州、パンジャーブ州、タミル・ナードゥ州が挙げられる。これらの州における大規模な乳製品生産は、チーズ、バター、カード、ヨーグルト、ギー、パニールなどの付加価値製品の製造基盤を強化している。

政府の取り組みと支援政策

インド政府は、乳製品産業の持続的な発展を促進するために、数多くの政策・制度を積極的に導入している。主要な政府施策としては、ラーシュトリヤ・ゴクル・ミッション(Rashtriya Gokul Mission)、国家酪農開発委員会(NDDB)、州協同組合酪農連合会、国家酪農開発プログラム(NPDD)、および酪農起業家育成制度(DEDS)が挙げられる。

さらに、国家酪農開発行動計画(NAPD)は、2021年〜2022年度に2億5,455万メートルトンであった国内牛乳生産量を、2023年〜2024年度までに3億メートルトンへ引き上げることを目標としている。また、全国人工授精プログラム(NAIP)は、遺伝的に優れた雌牛の品種改良を通じて、牛乳生産量の増大を目指している。これらの施策は、酪農家、協同組合、民間の乳業者が生産能力を向上させる上で大きな役割を果たしている。

製品セグメント別の動向

市場はタイプ別に、牛乳(バラ売り牛乳およびパッケージ牛乳)、チーズ、バター、乳製品デザート、粉乳、カード&ヨーグルト、クリーム、その他のカテゴリーに分類される。このうち牛乳セグメントが最大の収益シェアを占めており、世界中の数十億人の食生活において不可欠な栄養素の供給源として認識されている。インドではナチュラルミルクや農場産牛乳への関心が高まっており、牛乳消費は今後さらに加速すると予想される。

また、ギーは健康効果が高く複数の料理に使用されるとして注目されており、パニールも植物性タンパク質の豊富な食材として人気が急上昇している。機能性乳製品のカテゴリーも急成長しており、2020年にはハンギョー社がオメガ3・6・9を強化したグルメアイスクリームを発売、2021年にはラクタリス・インディアが初のプロバイオティクスヨーグルトドリンクを市場投入するなど、健康志向の消費者ニーズに応える製品革新が相次いでいる。

流通チャネルの変化

流通チャネルは、スーパーマーケット/ハイパーマーケット、専門小売店、オンライン小売店、その他(地元の牛乳販売業者や便宜店)に分類される。現状では、地元の牛乳販売業者や便宜店を含む「その他」セグメントが市場を支配しており、新鮮な生乳を直接提供する地元ベンダーへの根強い需要がその要因となっている。一方で、専門小売店もインドの発展途上市場において急速に台頭しており、豊富な品揃えと高品質な製品を提供することで消費者の支持を集めている。

加えて、オンライン小売チャネルはデジタル化の進展を背景に大きな成長を遂げると期待されており、大手企業が積極的にeコマースプラットフォームへの参入を進めている。例えば、タタ社は2020年にスキムミルクパウダーを「Tata NQ」ブランドで発売し、業務用顧客向けにオンライン販売を開始した。

主要企業と市場競争

インドの乳製品市場には数多くの有力企業が参入しており、市場の活性化を牽引している。主要企業には、グジャラート協同組合牛乳マーケティング連合(GCMMF)、ヘリテージ・フーズ、カルナータカ協同組合牛乳生産者連合、クオリティ・ミルクフーズ、マザー・デイリー(国家酪農開発委員会)、パラグ・ミルクフーズ、パンジャーブ州協同組合牛乳生産者連合(MILKFED)などが含まれる。これらの企業は、新製品の発売や製造設備の拡充、デジタル販売チャネルの強化に積極的に取り組んでいる。

特に注目すべき動きとして、2022年8月にパラグ・ミルクフーズが「プライド・オブ・カウズ」ブランドをアフマダーバードに展開したこと、またMILKFEDが2022年10月にデリーで「ヴェルカ」ブランドの展開を決定したことが挙げられる。

市場の課題と抑制要因

市場の成長には一定の課題も存在する。最大の懸念点の一つは飼料の不足問題であり、インド草地・飼料研究所(IGFRI)の推定によれば、2022年には青飼料が11.24%、乾燥飼料が23.4%、濃厚飼料が28.9%それぞれ不足していた。飼料不足は家畜の栄養状態を悪化させ、牛乳生産量の低下を招くリスクがある。

加えて、2022年に深刻な被害をもたらしたランピースキン病(lumpy skin disease)の流行は、約9万7,000頭以上の牛の死亡をもたらし、牛の頭数減少を通じて生産能力に打撃を与えた。こうした疾病リスクは、市場の持続的成長にとって引き続き重要な課題となっている。

結論

インドの乳製品市場は、世界最大の牛乳生産基盤、活発な政府支援、健康志向消費者の増加、そしてデジタル流通の拡大を追い風として、今後も力強い成長を続けると見込まれている。2032年に向けて2,740億米ドル規模へと拡大するこの市場は、国内の農業経済を支えながら、インド経済全体の成長にも大きく貢献するものである。

出典:https://www.fortunebusinessinsights.com/india-dairy-market-107416

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