アロマセラピー市場
アロマセラピー市場は、2023年に151億米ドル(約2兆2,650億円)と評価され、2024年には160億米ドル(約2兆4,000億円)に到達、2032年までに258億米ドル(約3兆8,700億円)へ成長すると予測されている(CAGR 6.27%)。Fortune Business Insightsの最新レポートによると、この成長は「全体的な健康・ウェルネスへの関心の高まり」「ストレス社会における自然療法の需要拡大」「医療現場での補完代替療法としての認知向上」が主な推進力となっている。特にヨーロッパは2023年時点で37.75%のシェアを占め、市場を牽引している。
市場規模の推移と予測(2023-2032)
2023年 151億米ドル
2024年 160億米ドル
2032年 258億米ドル(予測)
米国単独でも、2032年に5億9,005万米ドル(約885億円)へ到達する見込みであり、全体市場の約22.9%を占める計算となる。過去10年間で最も急成長している自然療法市場の一つであると言える。
セグメンテーション別分析
- フォーム別(用途別)
・ホリスティックアロマセラピー(全体的健康志向)
最も大きなシェアを占めるセグメント。スパ、リラクゼーションサロン、ヨガスタジオ、自宅でのセルフケアで広く使用されている。特にラベンダー、カモミール、ユーカリなどのリラクゼーション系精油が圧倒的な人気を誇る。
・医療アロマセラピー(臨床現場での使用)
フランスを中心に発展した「医療アロマ」が世界的に注目されている。病院・クリニックでの疼痛管理、感染症予防、精神科領域での補助療法として導入が進んでいる。日本でも2023年から一部の大学病院や緩和ケア病棟で正式に採用され始めている。
- モード別(使用方法別)
・吸入(ディフューザー、アロマスティック)
2023年時点で最大のシェア(約45%)。在宅勤務の普及により、仕事部屋や寝室での常時使用が定着。特に超音波式ディフューザーの販売台数は2020-2023年の3年間で世界的に3.8倍に急増した。
・局所(マッサージオイル、クリーム)
マッサージサロンや理学療法の現場で根強い需要。キャリアオイルと精油を組み合わせた製品が主流で、特にアルニカやウィンターグリーン配合のスポーツケア商品が急成長している。
・入浴(バスソルト、バブルバス)
LUSHやSABONなどのバスコスメティクスブランドが牽引。高級路線のアロマバス製品は、2023年のギフト市場で前年比28%増と最も伸びたカテゴリーとなった。
- エンドユーザー別
・住宅用(ホームユース)
全体の68%を占める最大市場。特に2020年のパンデミック以降、「自宅を癒しの空間にしたい」という需要が爆発的に増大した。
・商業用(スパ、ホテル、病院、ヨガスタジオ)
高付加価値市場として成長中。特に5つ星ホテルでは、アロマセラピーを含むウェルネスプログラムが予約率を20-30%押し上げる要因となっている。
地域別市場動向
ヨーロッパ(市場シェア37.75%/2023年)
圧倒的な市場リーダー。特にフランス、ドイツ、イギリスが中心。
フランス:医療アロマが保険適用される世界唯一の国
ドイツ:ナチュラルコスメの聖地として、厳格なオーガニック認証(BDIH、NaTrue)が市場の信頼性を支えている
イギリス:NHS(国民保健サービス)の一部施設でアロマセラピーが正式に導入されている
北米(特に米国)
2024-2032年のCAGRが最も高い地域(予測7.1%)。
特徴的な動きとして、2023年に全米で1,200以上の小売店が「アロマセラピー専門コーナー」を新設。Whole Foods MarketやTargetでは、専用棚の面積が2020年から3倍に拡大している。
アジア太平洋地域
最も急成長している地域(CAGR 8.3%予測)。
日本:2023年の市場規模は約1,800億円(推定)。生活の木、無印良品、@cosme storeなどでの販売が好調。特に「和のアロマ」(柚子、檜、ゆず、抹茶など)が海外でも注目されている。
中国:2023-2024年で市場規模が2.4倍に急拡大。中医学との融合商品(精油+漢方)が爆発的に売れている。
2024-2025年の最新トレンド(現在進行形)
- 「睡眠特化アロマ」の爆発的ヒット
ラベンダー+シダーウッド+ベルガモットのブレンドが、2024年上半期のAmazon全世界売上ランキングで上位を独占。特に「Sleep & Glow」というアメリカブランドは、2024年だけで売上8倍を記録。 - CBD配合アロマ製品の合法化ラッシュ
アメリカ30州以上でCBDアロマが合法化。2024年にはCBD+ラベンダーのロールオンがドラッグストアの定番商品となった。 - サステナビリティ革命
2024年から「レインフォレスト・アライアンス認証」「フェアトレード精油」が主流に。doTERRAの「Co-Impact Sourcing」モデルは、業界標準となりつつある。 - AI×アロマの融合
2024年に発売された「Aroma AIディフューザー」(Moodo、Aromatechなど)は、心拍数やストレスレベルを計測し、自動で最適な香りをブレンド。CES2025では主要テーマの一つとして取り上げられる予定。
日本市場の特異性(2025年現在)
・「香害」問題への配慮から、低濃度・微香性製品が主流
・高齢者施設でのアロマ導入が加速(認知症ケアとしてのラベンダー・ローズマリー)
・2024年に発売された「無印良品の超音波うるおいアロマディフューザー・大容量タイプ」は、発売3ヶ月で30万台突破
・生活の木が2024年に開始した「メディカルアロマテラピスト養成講座」は、定員の5倍の応募
今後の市場予測(2032年までのシナリオ)
ベースシナリオ:258億米ドル(CAGR 6.27%)
楽観シナリオ:320億米ドル(医療アロマの保険適用拡大の場合)
悲観シナリオ:220億米ドル(原材料価格高騰が続いた場合)
特に注目すべきは、2030年頃に予想される「アロマセラピーの保険適用拡大ムーブメント」。フランスに続き、イギリス、カナダ、オーストラリア、日本でも一部保険適用が検討されており、これが実現すれば市場は一気に400億米ドル規模に跳ね上がる可能性がある。
結論として、アロマセラピー市場は単なる「香りの市場」ではなく、「現代人の心と体の健康を支えるインフラ」へと進化している。2025年現在、既に私たちの日常生活に深く浸透しており、今後10年間でさらに不可欠な存在となることは間違いない。